イップスその後
思えば子供の頃から私は緊張感のある家庭で、リラックスするとか楽しむとは一切無縁の環境で育った。
常に剃刀の歯の上を歩いてるような感覚で常に逃げたい自由になりたいと思っていた。
イップスにはなるべくしてなったのだ。
解け始めた今思うことは緊張感から解放されたと言うこと。
何に似ているかと言えば土砂降りの雨の中視界がほとんどない知らない山道をたくさんの人を乗せて運転せざるを得ない感じ。
そこから今は雨が止んで人は降りた。
私は一人でいつもの道を走るようになった…そんな感覚だと思う。
トラウマのカウンセリングに通ったことがある。
『今 ここにいる』その感覚を意識的に取り戻す。瞑想、呼吸法なども含まれるが一番大事だったのは『今 ここにいる』を意識できるようになること。
よく、『夢中だったから覚えてない』なんて言うがそれが常に起こっていた。
認知症に近いのかもしれない。
実際自分は認知症かもしれないと何度も思った(今も少し思う)
人の名前が消えてしまう。
テレビに写る人あれ、誰だっけ?はみんな少なからず経験しているだろうがいつも会う人の名前が消えてしまう。
その頃の必死で覚えていようとノートに片っ端から名前を書き込むページが残っている。
仕事先の方の名前、親戚の名前、両親の名前、子供の名前。
必死の努力のあと。
歩きながら名前を言っていた。
それでも消えてしまう名前。
今も疲れてくるとこの症状は現れる。
眠ると自分が誰なのかわからなくなる。
夢の中の自分は別人格で男性だったりする。
起きた時私が誰なのかがわからない。
徐々にだが『ここに私がいる』感覚になることが出来るようになってきた。
何が違うか。
疲れが全然違う。
たぶん寝られなかったのだと思う。
常に眠かった。
ピアノを弾くなんて考えられなかった。
指一本動かせないほど疲れていた。
痩せ始めた。
ピアノを弾き始めたから。
結構な重労働なんだと気付く。
仕事が嫌でなくなった。
自分が誇りを持ってやってきた仕事に興味が持てなくなり辞めたいと思ってきた3年間だった。
徐々に仕事の楽しさを思い出し始めた。
やりがいを思い出した。
家族とはなれる時間があったこと。
一人の時間を持てる環境、ネットで温かい人間関係を体験させていただけたことがとても大きいと感謝している。